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高句麗=北朝鮮
「鉱山開発」こそが超有望な北朝鮮ビジネスだ
300兆円規模の埋蔵量を誇る宝の山に期待大
2018/05/05
https://toyokeizai.net/articles/-/219077
南北経済協力はこれまで、つねに慎重の上にも慎重を期して行われてきた。しかし、北朝鮮が4月11日に経済繁栄を国政の最優先順位の1つとして発表、南北首脳会談に続いて米朝首脳会談も予定されている。今後北朝鮮が言う経済に関心が高まりそうだ。
北朝鮮で開発可能な地下資源は約2億トン
この条件に最も適合するのが、北朝鮮にある、地下資源の共同開発だ。共同開発が始まれば、これまでの経済協力のパラダイムを変えることになりうる。北朝鮮は、豊富な地下資源を保有しているが、技術がない。一方の韓国は大部分の地下資源を輸入しているものの、世界的な技術を蓄積してきたため、双方の利害が一致するためだ。何よりも地下資源は経済的規模がこれまでの経済協力とは比較できないほど大きい。そのため、北朝鮮の経済発展に大きな力を与えると同時に、韓国政府は経済的支援なしでも南北経済協力事業を推進できる。
業界では、開発が可能な北朝鮮の地下資源が2億1600万トンであり、金額にして3000兆ウォン規模だと試算している。
ここに設備投資や加工で発生する付加価値や運送経費の節減効果まで合わせると、規模はさらに拡大する。韓国鉱物資源公社南北資源協力室の関係者は「南北の資源共同開発は2007年の南北首脳会談で合意済みであり、現地調査や合弁企業による共同開発などの経済協力も経験済みだ。北朝鮮への経済制裁が緩和されれば、すぐにもで再開できる」と言う。韓国エネルギー経済研究院関係者も「盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が北朝鮮と合意した経済協力事業が再開されれば、地下資源の開発へと段階を踏んで進められるだろう。
北朝鮮への経済制裁という問題は、南北間の問題というよりは米朝間の問題。今後の米朝首脳会談で解決策が出てくる」と期待している。
地下資源の共同開発を含めた南北経済協力は、2007年に盧武鉉大統領と金正日(キム・ジョンイル)総書記との間で合意した、45項目の相当部分を占めている。当時進められた資源の共同開発事業は4件であり、鉱山の現場調査がなされたところもある。
韓国産業通商資源省は2003年に北朝鮮と合弁会社をつくり、黄海(ファンヘ)南道鼎村(チョンチョン)黒鉛鉱山の開発を始めた。同公社が665万ドルを投資し、北朝鮮は現物出資という形を取った。2007年に稼働し、2008年に黒鉛900トン、2009年には1500トンを生産して韓国へ送られた。しかし、韓国哨戒艦沈没事件が北朝鮮によるものとした韓国政府は2010年、北朝鮮への制裁となる「5.24制裁措置」を行うと、鉱山の稼働も止まった。
このほかにも、韓国の民間企業が石材鉱山や無煙炭鉱山に投資したが、すべて中断された。今後、経済協力が始まるといっても、鉱物産業の特性上、すぐに再開することは難しい。鉱物資源公社南北協力室関係者は「北朝鮮との合弁会社契約は2023年までで、まだ期間は残されているが、設備・施設がどれほどの状態なのかは、現地調査をしないとわからない」と打ち明ける。
北朝鮮は世界の鉱物標本室
鉱物資源公社南北資源協力室のイ・インウ室長は2017年9月、「北朝鮮の鉱物資源統計」を出版する際、2012年までに北朝鮮が発行した各種地下資源関連資料を分析した。これによれば、北朝鮮の鉱物資源の種類は石炭鉱1種、金属鉱22種、非金属鉱19種など42種。鉱山数は石炭鉱山241カ所、金属鉱山260カ所、非金属鉱山227カ所など728カ所だ。ただ、実際に北朝鮮にある鉱種は約500種で、経済性のある鉱物は、このうち20種類ほどだという。
エネルギー経済研究院などの資料によれば、タングステン、モリブデン、重晶石、黒鉛、銅、マグネサイト、雲母、蛍石が北朝鮮の8大鉱物だ。これらは埋蔵量が世界でも上位10位圏内あるという。特にマグネサイトは、ロシアと中国に続き、世界3位の埋蔵量。マグネサイトは溶鉱炉の材料である内火壁の製造に主に使われ、肥料の添加剤、製糸、科学試料、製薬などにも使われる。
このほかにも、鉄の埋蔵量は世界6位圏、タングステンと黒鉛は同4位圏であり、金の埋蔵量も8位圏だ。希土類はもちろん、コバルトもわずかであるが、産出する。コバルトは経済性が劣り、生産にまで至らない確率が高いが、北朝鮮がどれだけ豊富な地下資源を持っているかがわかるだろう。
南北による鉱物資源の共同開発が始まった場合、最も注目されるのは北朝鮮の代表的な工業地区である、瑞川(タンチョン)地区だ。日本海に面している同地区は、咸鏡(ハムギョン)南道と同北道の境にある。同地区内の剣徳(コムドク)鉱山は、北朝鮮最大の亜鉛の産地。龍陽(リョンヤン)・大興(テフン)鉱山は、埋蔵量で世界3位となるマグネサイトを採掘する。瑞川での共同資源開発協議は2006年に始まった。
韓国政府は瑞川を共同資源開発特区として造成することを提案し、2回目の南北首脳会談で共同開発に合意し事業に弾みがついた。鉱物資源公社は2007年に瑞川の主な鉱山の現地調査を行った。公社関係者によれば「当時現地調査した人材が今でも公社に勤務中」と言う。
アジア最大の鉄鉱山である茂山(ムサン)鉱山も注目に値する。同鉱山は小さな川を挟んで、中国・吉林省と接する国境地域にある。ここは露天掘りでも有名。鉄の含有量を意味する品位は低いが、中国では高価格で買い取られている。同鉱山の鉄鉱石が磁力鉱であるためだ。磁力を帯びているため、これを利用して簡単に品位を高める一次加工が可能である。
鉱物資源公社関係者は「北朝鮮の鉄鉱石は磁鉄鉱が多く、品位が低くても簡単に分離でき、実際に北朝鮮も清津(チョンジン)地域へ鉄鉱石を運び、そこで分離する作業を行っている。
中国からは茂山鉱山を直接眺めることができるほど近く、中国側の税関を通じて輸出を多く行っていたこともある」と説明する。埋蔵量が多いことで北朝鮮が自慢していた希土類にも関心が集まっている。ただ、希土類の埋蔵量を正確に算定するためには、南北共同での現地調査が必要だ。
黒鉛鉱山などで成功事例も
2回目の南北首脳会談があった直後の2007年、北朝鮮は中国の輸出用船舶で韓国に石炭を輸出し、2009年には47万tにまで輸出量が増えた。韓国が投資した北朝鮮の炭鉱開発事業は10件。公共分野への投資が7件、民間企業による投資が3件となっている。瑞川地区の3鉱山は成果なく終了した。
鉱物資源公社が北朝鮮側と合弁企業を設立して開発した、鼎村(チョンチョン)の黒鉛鉱山は生産に成功し、輸出までできるようになった。収益は生産物分配方式とされ、15年間生産される製品とバーターで、投資金を回収する計画だった。2010年の5.24措置以降には、すべての事業が中断されている。
北朝鮮の地下資源開発がこれまでの経済協力事業を根底から変えるほどの威力を持つのは、北朝鮮が保有する資源の質と量が大きいためだ。北朝鮮から原材料を輸入するようになれば、運送費と時間を大きく節約できる。鉄鉱石など鉱物資源は重量があるため、コスト全体に占める輸送費の割合が高い。
たとえば、鉄鉱石1トン当たりの価格が60ドルとすれば、運送費も60ドル程度かかる。企業は一般的に原材料契約を3年単位で行っている。その代わり、南北経済協力が現実に動き出せば、韓国企業が北朝鮮に行って鉱山を開発したり、稼働まで協力できる。かつて鉱物資源公社が北朝鮮と結んだ契約のように、投資金は北朝鮮産の鉱物で回収もできる。
北朝鮮における鉱物採掘量はこれまで減少してきた。これは埋蔵量が減ってきたのではなく、設備があってもカネがなくて稼働できないケースがあり、経済制裁で輸出もできないためだ。エネルギー経済研究院関係者は「鉄鉱石から鉄をつくるときにはコークスが必要だが、制裁で輸入できていない」と言う。現在、北朝鮮の鉱山稼働率は、20%程度とされている。
北朝鮮の鉱物資源は技術さえ導入すれば、経済性がはるかに高まるという。中国側の資料によると、鉄鉱石の場合、豪州産とブラジル産の品位は通常63%程度だが、中国の鉄鉱石は31%、北朝鮮産は28%。中国が自国の鉄鉱石の品位が高いのに、価格がそれほど安くなくても北朝鮮産の鉄鉱石を輸入していたのは、北朝鮮産が品位を簡単に引き上げることができるためだ。中国は北朝鮮の鉄鉱石を豪州産の価格の80%程度で輸入してきた。
経済を対外開放した国の大部分は、地下資源の採掘権を海外に与えて、国富を蓄積してきた。ミャンマーやカンボジアのように、比較的最近に民主化した国家も、中国などに鉱山開発を任せ、一定の収益を受け取ってきた。
北朝鮮が次なる経済協力案件として地下資源を本格化させれば、北朝鮮の経済成長に大きく寄与できるのは明らかだ。エネルギー経済研究院によれば、北朝鮮のGDPにおいて鉱業は全体の13.4%であり、北朝鮮の輸出額の70%を鉱物が占める。
鉱山を開発すれば、製鉄や精錬のような加工産業に対する投資が行われ、雇用拡大と付加価値創出にもつながる。南北鉱物資源開発協力がスムーズに行われれば、北朝鮮に対する財政的支援という負担がなくても、北朝鮮の経済開発と経済協力事業を同時に推進できる。
以前の借款返済が先との指摘も
米朝首脳会談の行方を見守る必要があるが、現在は国連による経済制裁で北朝鮮の物資を韓国へ持ち込めない。経済制裁が解除されない状況では、当然協力もない。まずこの点を解決すべきだ。
制裁解除は北朝鮮への米国の意思が重要。現実的な問題もある。韓国政府は2007年に8000万ドルを借款形式で北朝鮮に提供したが、2010年以降、南北経済協力はほかの協力事業とともに、中断したままだ。
2012年にこの借款を提供した韓国の輸出入銀行が、5年の返済猶予が終了した後に償還の開始を北朝鮮側に要求したが、なしのつぶてだという。南北経済協力事業を経験した韓国政府側関係者は「経済協力を始めるなら、まず北朝鮮が8000万ドルの借款を償還すべきだ。南北合弁で開発した鉱山の契約も履行すべき」と言う。この関係者は「ただ今回の首脳会談が関係回復に優先順位を置いていたので、経済協力が再開されたとしても、問題が経済的な論理で解決されるとは思えない」と打ち明ける。
資源を共同開発しても、その果実を収穫できるインフラ建設と、投資への安全性保障も必要だ。しかし、開城(ケソン)工業団地が突然閉鎖されたように、投資家が人質のような形に追いやられる余地が残っているのなら、経済協力の軸となる民間企業が資源開発投資を行うことはできない。
現在、北朝鮮の地下資源投資に関する法律は、北南経済協力法と外国人投資関連法、地下資源法がある。北南経済協力法は宣言的な内容にすぎないため、投資への安全を保障することはできない。地下資源法によれば、廃鉱も許可制とされている。経済性がなくても投資家が自律的に廃鉱を決定できないことになる。開発主体も北朝鮮国内機関に限定されている。外国人投資法でも資源輸出を目的とする外国人企業の投資は禁止されている。北朝鮮の法意識上、最高統治者と朝鮮労働党、政府との関係が複雑であることや既存の関連法が存在するだけに、特別法やこれに準ずる具体的な協議が必要とされる。